新政 涅槃龜10周年記念酒

December 2024

 

 

新政酒造の「涅槃龜」生誕10周年を記念した「涅槃龜10周年記念酒」が販売されます。 黒亀の玄武と、90年代のグランジを代表するニルヴァーナのカート・コバーンとの混合オマージュとしてキャラクターをデザインしました。限定品として田村一さんによる龜碗(かめわん)セットもあります。

 

 

ロック亀に寄せて
ニコラ ビュフ

新政のラボシリーズの好きな概念の一つは四神のリミックスです。クラシックとポップ文化の間にリンクを作るという僕の作風と共通点があります。

ラボのニルガメは黒亀の玄武と、90年代のグランジを代表したニルヴァーナのカート・コバーンとの混合のオマージュとしてのキャラクターになっています。

ロックコンサートでギターを壊すまでの激しいパフォーマンスをするニルガメを想像してみました。ティーンエイジャーの記憶にはっきり記録された瞬間のシリーズの様に、スケッチの風味を保ちながら沢山のポーズを描きました。箱、瓶、そして田村さんが製造した酒器のそれぞれのドローイングの中心に、象徴的なメガネを付けている、暗闇とロックの心を持つ黒亀のニルガメを描きました。

 

 

涅槃龜十周年記念酒の発売に寄せて
新政酒造株式会社 代表取締役 佐藤祐輔

2014年にプロトタイプが登場した「涅槃龜(にるがめ)」も、いつの間にか10周年を迎えることになりました。このたび、2024年度中に発売にこぎつけることができ、たいへん嬉しく思っております。 なお本作品は、2023年度醸造の貴醸酒仕込みの低精白酒で、周年記念にふさわしいように通常の「涅槃龜」とは一味違うものを誂えております。

「涅槃龜」の歴史は、現在の新政のラインナップの中でも実際には最も古いものの一つに属します。このような低精白への取り組みは、 「やまユ」や「亜麻猫」と並び、2008年にはすでに始まっており、当初は「純米80%」という名称でした。その後、「純米85%」「純米90%」と精米歩合がさらに上がり、より低精白の真髄に近づいていきました。

「涅槃龜」の名前を冠するようになったのは、製法が確定し、味わいが安定してからのことです。

ちなみに、この酒の名称は、私が愛するロックバン「Nirvana(ニルヴァーナ)」に由来します。これに、黒色を表す「混色 (くりいろ)」と、 中華思想の四神のひとつ「玄武」をモチーフとした漢字を当てて、完成に至りました。

さて、当蔵が低精白醸造を始めた当時、このような米を磨かない酒造りは非常に珍しいものでした。広島の「亀齢」さんや、千葉の「五人娘」さんが先鞭をつけて取り組まれておられたくらいです。おそらくは「吟醸造り」の内包する限界が、これらの造り手の眼にははっきりと映し出されていたのでしょう。

特定のブランド米を使う、とにかく米を削る、最新の吟醸酵母を使うという方向性では、どこの蔵の酒も同じ味わいになってしまいがちです。吟醸酒という日本酒業界にとっての「伝家の宝刀」はもうすでに抜かれてしまった。これが人口に膾炙してゆくあいだに、そして客に飽きられるその前に、より魅力的な新しい姿の日本酒を作らねばならぬ ーー少数の蔵元はそのような危機感をはっきりと感じていたといえます。我々もまた、一つの 回答として、自県産米の全量使用や、純米酒の みの製造、さらに6号酵母のみを使うといった伝統的製法への回帰を至上命題と掲げましたが、低精白純米造りは、こうした取り組みの土台を構成する大事な要素でありました。

現在では、低精白の酒も市場ではさほど珍しくなくなりました。我々も、より磨かぬ酒を追求し、ついに玄米で酒を仕込むまでに至っています。今や、低精白の酒は魅力的な題材として、 多くの酒蔵のレパートリーの中に存在するようになっています。そう、まだまだできることはたくさんあるのです。

日本酒の魅力は、あくまでも「米」と「水」のみから多様な味わいを生み出すという、日本人ならではのミニマルな美学にあります。

これからの日本酒にとって、低精白の純米酒は、より鮮やかな表現を可能にする母体となることでしょう。我々としても、低精白の先駆蔵のひとつとしての気概を忘れず、この「涅槃龜」をもって、その新たな世界を真っ先に切り拓いてゆく所存です。
このたびはお買い上げ、 誠にありがとうございました。

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